心臓病治療の最前線 目次へ
◆心筋梗塞へのPTCA
心筋梗塞は冠動脈が閉塞して流れが完全に途絶えることが原因です。すると心臓の筋肉(心筋といいます)には栄養と酸素が供給されなくなります。その心筋は壊死に陥り収縮できなくなり、心臓の働きが悪くなります。閉塞した部位が冠動脈の根元の方で、多くの心筋が一度に壊死すると心臓の働きが著しく低下し、場合によっては命にかかわることもある怖い病気です。閉塞した冠動脈をそのままにしておくと心筋の壊死が進行します。一刻も早く流れを回復させることが大切です。これを再開通療法(再疎通療法)と呼びます。心筋梗塞の発症早期に再開通療法がうまく成功すれば、心臓の働きが低下する度合いが軽くすみます。心筋梗塞の治療のポイントは、再開通療法を速やかに適切に施行することなのです。小倉記念病院循環器科では、24時間体制で心筋梗塞患者を受け入れ、再開通療法を施行できる体制を整えています。それでは実際の再開通療法を見てみましょう。

@ A
患者さんは70歳の男性です。糖尿病と高血圧症をもっていました。突然に激しい胸痛に襲われ、冷汗がでてきました。このため糖尿病で通院している「かかりつけ医」を受診し心電図検査の結果、急性心筋梗塞と診断されました。その医師から小倉記念病院を紹介され、救急車で搬送されてきたのです。来院後、本人と家族に病状と必要とされる治療の内容、その必要性について説明し同意を得ました。そして冠動脈造影が行われました。この写真に示すように矢印の位置で冠動脈が閉塞しています。右冠動脈が途中で閉塞し途絶えていることを示しています。この造影を行なった時点では患者さんは激しい胸痛がまだ続いていました。 PTCA(風船療法)を行ない再開通させる方法を選択しました。ガイドワイヤーという細く軟らかな針金を閉塞した血管に通したところです。ここで造影したのが、この写真です。冠動脈には狭窄はありますが末梢まで見えるようになりました。この狭窄している個所を心筋梗塞の責任病変と呼んでいます。心筋梗塞は動脈硬化で冠動脈が狭くなった部位に最後に血の固まりができて詰まるのです。
 
B C
責任病変をバルーンで拡張しているところです。ここでは、径が3mm、長さ20mmのバルーンを用いて拡げました。さらに再び詰まったり、閉塞したりしないようにステントと呼ばれる金網でできたチューブを植え込みました。ステントについては、後にある「PTCAの限界を超えるニューデバイス」の項に詳しく説明しています。 再開通療法も無事に成功しました。最終の造影を行なったのがこの写真です。右冠動脈がきれいに流れているのが見えます。この時には胸痛もほとんど消えてなくなり、患者さんの表情も穏やかになりました。心筋梗塞を発症してから3時間半、小倉記念病院に到着してから40分後のことでした。3時間あまり閉塞していたので心筋のダメージはゼロではありませんが、再開通療法を施行しない場合よりは極めて軽くすみました。この患者さんは、その後CCU(冠疾患集中治療室)に入院となりました。再開通に成功しても、しばらくは脈の乱れなどが起こる可能性があるからです。しかし、なにごともなく経過し発症10日目に退院となりました。それから2年あまり経た今も元気に活躍されています。本人があえて言わなければ心臓の大病をしたとは誰も思わない元気さです。

心臓病治療の最前線 目次へ