心臓病治療の最前線 目次へ
◆不整脈の根治をめざすアブレーション
■小倉記念病院での不整脈治療について

 小倉記念病院では上室性頻拍症、心房細動、心室頻拍に対する特殊治療である高周波カテーテルアブレーションを平成16年には年間180症例に施行しています。平成16年秋に不整脈治療専門のカテーテル室が新たに導入され平成17年は320症例に施行いたしました。1988年に1例目のアブレーションを施行して以来現在までに約1400例に実施し、症例数、成績ともに日本有数であり高い評価を得ています。またペースメーカー留置は年間約300例、植え込み型除細動器留置も年間約60例に施行しており国内では最も多い症例数です。平成16年4月からは重症心不全に対しペースメーカーを用いて治療する両室ペーシングが新たな治療法として認可されました。当院では現在(平成18年2月)までに約130例に対し施行しており本治療法の経験も国内有数です。
 不整脈疾患に対するカテーテルアブレーション治療は合屋雅彦部長を中心に施行されています。アブレーション用のカテ室を備え、週に5から10例(月曜から金曜日各1〜3例)に対し施行しています。設備・スタッフともに充実しており緊急カテーテルアブレーションにも対応可能です。

■カテーテルアブレーションについて

 カテーテルアブレーションは、頻脈性不整脈に対し、心臓の内部へカテーテルを挿入し、頻拍の原因となっている異常興奮発生部位・異常興奮旋回路または異常興奮伝導路を高周波を用いて選択的に焼灼し頻脈性不整脈を根治する治療法です。その対象となるのは、WPW症候群、房室結節回帰性頻拍、心房頻拍、心房粗動、心房細動および心室頻拍です。
 当院では1988年より本治療法を導入し経験を積み重ね現在までに1100例に達し日本有数の症例数を誇っております。また現在までに急性期死亡、緊急手術を要するような合併症を認めておりません。2004年からは発作性心房細動症例に対する肺静脈隔離アブレーションおよび心室頻拍に対するElectroanatomical Mapping Systemを用いたアブレーション治療を開始しております。
不整脈に関する治療・相談を希望される方は金曜日の合屋医師の外来を受診ください。
 各々の疾患のアブレーションにつき簡単に説明します。

①発作性上室性頻拍症
 発作性上室性頻拍症はWPW症候群あるいは房室結節回帰性頻拍を原因とすることが多く、異常伝導路に対するアブレーションにより完全な治癒が可能です。再発率も低く薬物治療が不要になるなどメリットが多いことから当院では積極的に施行しております。小倉記念病院では局所麻酔下に1〜2時間の術時間で98-99%の治癒率を上げています。入院期間は2泊3日あるいは3泊4日です。

②通常型心房粗動
 通常型心房粗動は右心房内を大きく異常興奮が旋回するために発症します。興奮の旋回路に対するアブレーションにより治癒が可能です。当院では局所麻酔下に1〜2時間の術時間で95%の治癒率を上げており入院期間は2泊3日あるいは3泊4日です。

③特発性心室頻拍
 一見心臓に何ら異常のない方に発症する心室頻拍です。右心室から肺動脈への出口にあたる右室流出路と左心室の刺激伝導系とよばれる心臓の正常な興奮を伝導する部位から発症するタイプにわかれます。いずれの場合にも局所麻酔下にアブレーションが可能です。80〜90%の治癒率で入院期間は原則として3泊4日です。

④器質的心疾患に合併する心室頻拍
 陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症、肥大型心筋症、心サルコイドーシス、不整脈源性右室異形成、心手術後などに生じる心室頻拍です。それぞれの疾患により生じた障害された心筋の中の異常伝導路を介し異常興奮が大きく旋回するために生じます。通常用いられるレントゲン装置、心電図記録装置のみを用いた場合には治療は困難です。当院ではelectroanatomical mapping system (CARTO system)を用い不整脈の機序解明したのちアブレーションを施行しています。器質的心疾患に合併する心室頻拍は致命的になることも多いためアブレーションだけではなく抗不整脈薬、植え込み型除細動器を組み合わせた治療を行い良好な成績を上げています。

⑤発作性心房細動

 心房細動は右房洞結節から生じる正常な脈と心房性期外収縮(矢印)が衝突することにより心房内が電気的に不安定なリエントリーを生じ発生すると言われています。
 心房細動の引き金となる心房性期外収縮の約90%が肺静脈を起源とします。肺静脈を高周波通電により電気的に隔離することにより心房性期外収縮を消失させ心房細動を根治します。本治療法は世界的にも1990年代後半より始まった新しい先進的な治療法でありまだまだ器具や方法に改良が加えられている段階です。専門的な知識と技術を要するため日本国内では限られた施設でしか行われていません。当院では2006年2月までに約100例に対し施行し80%を超える症例で心房細動が消失しています。

⑥心手術後のマクロリエントリー型心房頻拍(非通常型心房粗動)
 心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、心臓弁膜症などに対する手術をうけた患者様の数パーセントに数年から数十年後に頻拍発作が出現します。マクロリエントリー型心房頻拍は手術時に加えられた切開線の近傍に異常興奮の旋回回路が存在することが多く経験されます。Electroanatomical mapping systemを用い旋回回路を解明し高周波通電により治療しています。当院では平成18年2月までに30例を超える症例に対し施行し約80%の症例で頻拍の根治に成功しています

■ぺ一スメーカー、植え込み型除細動器(ICD)治療

 徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロックおよび徐脈性心房細動)は心拍数が通常より遅くなり、時に心停止を来す疾患です。その程度によっては、めまい、失神発作を来たし、ぺ一スメーカー治療が必要となります。本治療法は局所麻酔下に、右あるいは左前胸部皮下に約20gの刺激発信器を植え込むとともに、心腔内(右心房あるいは右心室)に1-2本のぺ一シングリードを挿入・留置し、徐脈を改善するものです。当院では局所麻酔下に施行し手術時間は約1時間です。生理的な心拍数の変化を実現すべく主にDDD型ペースメーカーを使用し、年間約200症例をこえる患者さまに植え込み術を行っており、約2000名の患者さまがペースメーカー外来に通院されています。
 また日本では1998年より重症心室性不整脈に対し植え込み型除細動器留置治療が可能となりました。当院でも1998年より除細動器を用いた治療を開始しています。現在では突然死の可能性のある重症心室性不整脈の救命には除細動器治療が不可欠とされています。しかしながら本治療法は高度の専門知識・技術が必要となるため実施できる施設は限定されています。当院は厚生労働省より植え込み型除細動器治療を行う施設認定をうけ年間約60症例に対し施行しています。
 さらに日本にペースメーカー治療が導入され20年以上経過しペースメーカーを使用している患者様がすでに20万人を超えています。そのような患者様の中で感染症等のため古くなったリードを抜去しなければならない症例が増加しています。しかしながら日本ではペースメーカーリードを安全に抜去可能なシステムはありません。当院ではこのような患者様のためにリードが安全かつ確実に抜去可能なシステムを本邦に先駆けて導入しています。

■両室ペーシング治療

 拡張型心筋症、陳旧性心筋梗塞などの疾患のため高度に心機能が低下している重症心不全症例の多くは右心室と左心室間に収縮のタイミングのずれが存在しさらに心機能を悪化させています。このような場合にペースメーカーを留置し右心室と左心室にペーシングリードを挿入し同時にペーシングを行うことにより収縮のタイミングのずれを補正し心機能を改善させる治療(両室ペーシング治療)が平成16年に厚生労働省より新たに認可されました。本治療法は心移植が普及していない我が国においては重症心不全に対する新しい治療として期待されています。本治療法も高度の専門知識と技術が必要であるため実施施設が限定されています。当院は本治療法においても施設認定を受け平成17年6月までに約80例に対し施行しており本治療法の経験も国内有数です。


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